●導音
ある音階ルート音から8度上のルート音へ上行する時、終着ルート音の直前の音との音程は通常、短2度となります。例えばCメジャーだとBからC、GメジャーだとF#からGと、二音間は短2度となり、これによって、音階の終止感を得られます。この直前の短2度の音を特に「導音」と呼びます。
●マイナースケールにおける導音の問題
音階Aの記事で記したナチュラル・マイナースケールですが、この音階をそのまま利用した場合、第7音とルート音の音程は長2度となっており、導音となっていません。より強い終止感を得るためには、このマイナースケールに何か手を講じる必要があります。
●ハーモニック・マイナースケール
そこで生み出されたのが、ハーモニック・マイナースケール(和声的短音階)です。 このマイナースケールは問題だった第7音を半音上げることによって、導音としました(終止ルート音からみて短2度)。 単純な解決法ではありますが、聴いてみると強い終止感を感じることができると思います。
▼ハーモニック・マイナースケール(和声的短音階)
●メロディック・マイナースケール
さて短音階は、ハーモニックマイナースケールの発明によって導音の問題(終止感を得さしめること)は解決した訳ですが、このことはまた新たな問題を生むこととなりました。 それは第6音と第7音の音程が、1音半開いてしまうことです。
先ほどのハーモニック・マイナースケールの第6音と第7音の音程差に注目してください。第7音を半音上げたため、音程差は1音半、つまり短3度となってしまっています。 このことはスムーズな音階上行に、違和感を与えています。
そこで第6音を半音上げた、より旋律的な短音階が考えだされました。これをメロディック・マイナースケール(旋律的短音階)と呼びます。
▼メロディック・マイナースケール(旋律的短音階)
●マイナースケールのまとめ
これまでに3種類のマイナースケールを記しました。では実際はどのマイナースケールが利用されているのでしょうか。 いくつかの改良が加えられたメロディックマイナースケールは、何やら完璧なマイナースケールに感じますが、実はこのスケールを冷静に見ると、メジャースケールと第3音以外は同じということが分かります。逆にいうと第3音が出てこなければ、メジャースケールなのかマイナースケールなのがが、解らないという欠点があるのです。
一般的には上行ではメロディックマイナースケールを用いて、下行時はナチュラルマイナースケール、またはハーモニックマイナースケールを用いています。 けれども実際の音楽は、旋律の単純な上昇や下降ばかりではありません。上記の方法はあくまで基本スタイルとして、マイナースケールは現実には作曲者や表現者の感性によって、さまざまな使い方をされていると言えます。
▼和声的短音階・旋律的短音階の上行・下行とカデンツ
(Aマイナースケール)