唐の俗楽二十八調


●唐の俗楽二十八調

古代中国において理論上考えられる八十四調がありましたが、唐代の玄宗の治世に楽制改変が行われ、二十八の調に整理されたようです。二十八調とは、七つの音のそれぞれの「宮」「商」「角」「羽」の音を宮音(基音)とした、四つづつの二十八の調です。



▼唐代二十八調(音律名は英名にて表記)

唐楽廿八調
(雅楽律)
第1音 第2音 第3音 第4音 第5音 第6音 第7音
黄鐘均宮調 C D E F♯ G A B
黄鐘均商調
(壱越調)
D E F♯ G A B C
黄鐘均角調 E F♯ G A B C D
黄鐘均羽調
(黄鐘調)
A B C D E F♯ G
太簇均宮調 D E F♯ G♯ A B C♯
太簇均商調
(太食調)
E F♯ G♯ A B C♯ D
太簇均角調 F♯ G♯ A B C♯ D E
太簇均羽調
(盤渉調)
B C♯ D E F♯ G♯ A
姑洗均宮調 E F♯ G♯ A♯ B C♯ D♯
姑洗均商調 F♯ G♯ A♯ B C♯ D♯ E
姑洗均角調 G♯ A♯ B C♯ D♯ E F♯
姑洗均羽調 C♯ D♯ E F♯ G♯ A♯ B
仲呂均宮調 F G A B C D E
仲呂均商調
(双調)
G A B C D E F
仲呂均角調 A B C D E F G
仲呂均羽調 D E F G A B C
林鐘均宮調 G A B C♯ D E F♯
林鐘均商調 A B C♯ D E F♯ G
林鐘均角調 B C♯ D E F♯ G A
林鐘均羽調
(平調)
E F♯ G A B C♯ D
南呂均宮調 A B C♯ D♯ E F♯ G♯
南呂均商調 B C♯ D♯ E F♯ G♯ A
南呂均角調 C♯ D♯ E F♯ G♯ A B
南呂均羽調 F♯ G♯ A B C♯ D♯ E
應鐘均宮調 B C♯ D♯ F F♯ G♯ A♯
應鐘均商調 C♯ D♯ F F♯ G♯ A♯ B
應鐘均角調 D♯ F F♯ G♯ A♯ B C♯
應鐘均羽調 A♯ B C♯ D♯ F F♯ G♯
※古代中国の唐の時代には、雅楽律(古律)と俗楽律(新律)の二種類がありました。俗楽律は雅楽律よりも長二度高い音律となります。例えば俗楽律の太簇均商調は雅楽律では黄鐘均商調(壱越調)となります。日本の古楽書の多くは俗楽律(新律)を用いているようですが、藤原師長撰「仁知要録」などは雅楽律(古律)を用いています。表は雅楽律で表記しています。



玄宗勅による楽制改革では、その公布において十四調のみの公示がありました。岸辺成雄氏の論によると、これら十三の調(不明な金風調を除く)の名称と音組織を知れば、唐末の「楽府雑録」などに見える俗楽二十八調の組織がわかるため、公示に記されていなかった残りの十五調を含めた二十八調は、天宝十三載の改変時に、理論として制定されていたと考えられます。

日本雅楽が、平安朝に左方唐楽、右方高麗楽に二分されるという大きな楽制改革を経験したように、中唐では、胡俗融合を制度上で明治するということが行われた。玄宗の天宝十三載(754)の、曲名変更と調名確立の公布である。...中略...天宝十三載七月十日、都長安の太常寺(文部省)の太楽署(音楽局)の中に大きい石を立て、それに二百数十曲の曲名を十四調に分けて彫りつけ、この楽制改変を天下に公示した。...中略...これら十三調の名称とその組織を知れば、二十八調の組織がわかる。即ち、十三調が、天宝十三載に改名されたということは、二十八調が天宝十三載に理論として創定されていたことを意味すると理解できるのである。

(岸辺成雄「唐の俗楽二十八調の成立年代に就いて」東洋学報二十六巻-二・三・号、二十七巻-一号)より。




●六調子

古代日本に渡来し、実用された音階は、上記の二十八の音階の内、六つの音階(調子)とその枝調子です。それらは日本風の名称を名づけられて三調子ずつ二つの種類に分けられ、一つは「呂」、もう一つは「律」とされました。 枝調子は六つの調子に吸収され、現在では絃楽器の調絃や音取の曲名等一部に、その名称の名残を留めるのみとなっています。



▼渡来した六調子とその音階(■は呂、□は律)

■壱越調-------------黄鐘均商調 Ichikotsu

■双調---------------仲呂均商調 Soujyo

■太食調------------太簇均商調 Taishiki

□平調---------------林鐘均羽調 Hyouzyo

□黄鐘調------------黄鐘均羽調 Oushiki

□盤渉調------------太簇均羽調 Banshiki

↑上記6つの調子を見てみると・・・

■で表記している呂の調子のグループは、「商調」の音階
□で表記している律の調子のグループは、「羽調」の音階

であることがわかります。