渡来した音階と旋律楽器の音階


現代の雅楽(唐楽)で、旋律を担当している篳篥と横笛の調声音(その調で用いられている音)を考えてみます。ここでは「盤渉調 越天楽」という楽曲を使って、曲が転調する「重頭」までの旋律楽器の調声音を見てみます。

※「重頭」
譜字。楽曲を二返くり返す時に、初返の終わりに加えられる旋律。重頭を経て冒頭にもどる。「越殿楽」「合歓塩」「陵王破」などにある。楽曲が一返の時よりニ返目は重頭の部分の旋律が増すので拍子が多くなる。譜は一返の終わりに重頭と記して続けて書く。「越殿楽」の例。一返の時は拍子八。ニ返の時は拍子二十。(通常の曲はニ返の時は一返の二倍の拍子数になる)。

「雅楽辞典 (音楽之友社)」より




まずは音階を整理します。盤渉調は太簇均羽調と同じ音階で、以下のとおりでした。

■盤渉調−太簇均羽調

Banshiki

和名と英名の調声音と、基音からみた音階を以下に記します。

Ex306

上図より、「盤渉調越天楽」で用いられる調声音と階名が予測できます。この楽曲は重頭までは転調しませんから、篳篥と横笛の調声音は、上図のとおりのはずです。



次に楽曲から、実際に用いられている調声音を見てみます。例として、盤渉調越天楽の冒頭の旋律を、五線譜で見てみましょう。


■盤渉調 越天楽  小曲 早四拍子
(「五線譜による雅楽総譜」巻ニ 芝祐泰 編著 カワイ楽譜)より

Ex305



・・・。#が一つですし、調声音も、何だか違う感じがします。
確認のため、「盤渉調 越天楽」の重頭までの旋律楽器の旋律の音を、下に図示してみます。

Ex307

▲上図を見ると、渡来した「太簇均羽調」の音階とは随分違っていることが解ります。




なぜ現代の雅楽の旋律楽器の音階は、渡来してきた音階と違っているのでしょうか。それは渡来してきた古代中国の音階が、日本人の旋律感覚に合わなかったため、平安時代の楽制改革等を経て、どうやら音階に和風的改良が加えられたためのようです。
それでは次の項で、音階の和風化について記します。