調名 | 舞種 | 別名 | 構成 |
平調 | 平舞・文舞 | - | 単一楽章 |
|
舞人 | 装束 | 曲姿 | 番舞 |
四人 | 右肩袒の襲装束・鳥甲 | 中曲・新楽 | 延喜楽 |
萬歳楽(万歳楽)とは平調に属する楽曲です。舞楽として上演される機会の多い有名な作品ですが、作曲・伝来に関してはいくつかの説があります。
@唐の聖王の治政に鳳凰が飛んできて、聖王万歳と囀ったので、その声を楽に、その姿を舞にした・・という説。
A隋の煬帝が作らせたという説。
B隋の煬帝が白明達に作らせたという説。
C則天武后が宮中でかっていた人の言葉を話す鳥(九官鳥?)が常に万歳と言っていた・・というところから作られたと言う説(鳥歌萬歳説)。
D漢の武帝が作らせた曲とする説。
Eわが国で用明天皇の作とする説。
等の諸説があります。
或ル書ニ云フ、我朝用明天皇御作ト云フ。旁不審無ニ非ズ。尋ヌル可也。
是ハモロコシニ、隋煬帝ト申ス御門ノ御作セ給ヒタル也。唐国ニハ、賢王ノ世ヲヲサメサセ給フ時ニ、鳳凰ト云フ鳥カナラズ出来テ、賢王万歳々々(ト)囀ナルヲ、囀詞ヲ楽ニ作リ、振舞姿舞ニツクラセ給テ侍也。此朝ヘハ誰人ノワタシタルトイフ事ミエズ。
古代中世芸術論「教訓抄 巻第一」-日本思想体系-より
●往古の演奏作法
昔ハ舞五返アリケレドモ、三・四帖ハタヘテ、今ハ一・ニ・五帖バカリゾツタハリテ侍ル。当時モチヰル様、口伝ノ候ナリ。中古ハ卅拍子一帖半ヲ舞。ソノ時ハ、第一帖ト第五帖ノ終 ヲハリ 十拍子舞也。此時、笛ニモ習侍ベシ。一返卅拍子ヲ吹テ、又半帖ハ返吹テ、即加拍子ナリ。尤秘説為。一帖 廿拍子 舞時ハ、第一帖ノ始 十拍子、第五帖ノ始(十拍子)舞テ、半帖ヨリ加拍子ナリ。近代コノゴロハ十拍子ヲ略シテ、初半帖 十拍子 舞。第八拍子ヨリ加三度拍子。或管絃者説云ク、 中半 五拍子 加拍子。舞家ニハ之ヲ用不。
・・・途中略・・・
舞出ルニハ品玄ヲ吹。入時、昔ハ入調ヲ吹ケレドモ、近代ハ臨調子ヲモチヰル。 入調秘故也。 又云、品玄ニ返吹所アリトイヘドモ、入調ヘ渡テ吹説アリ。秘事也 。此曲ニ於テハ、公私ニ付テ、祝所、舞モ楽モ先ニ之ヲ奏ス。 目出曲也。
古代中世芸術論「教訓抄 巻第一」-日本思想体系-より筆者一部読み下し
●現行の演奏作法
-舞楽-
萬歳楽の舞楽演奏は、平調調子(横笛は品玄)から始まります。この曲は各管の第一奏者※ より第二奏者(グループ)、第三奏者(グループ)へと、カノンのように順次遅れて演奏する「退吹」(おめりぶき)と呼ばれる奏法で演奏されます。この楽曲が演奏される間に、舞人は順次登台して出手を舞います。
舞人全ての出手を終えた後、各管第一奏者の吹止句で演奏を終了します。次に当曲を演奏し、舞人は当曲舞を舞います。当曲終了後再び平調調子(横笛は臨調子)が退吹で演奏される中、舞人は入手を舞って順次降台、各管第一奏者の吹止句を以って演奏を終了します。なお現行の舞楽演奏では通常、絃楽器は用いません。
-管絃-
萬歳楽の管絃演奏は、平調音取からはじまります。この曲は三管と両絃の第一奏者と鞨鼓奏者で、演奏します。音取の演奏を終えると三管第一奏者は楽器を膝元に、琵琶と鞨鼓奏者は楽器と桴を一旦元に収め、左手して控えます(箏奏者も同)。鞨鼓奏者が桴を構えた後、当曲を横笛の第一奏者より演奏します。
※...管楽器の第一奏者は「主管」と呼ばれます。
舞楽 萬歳楽 | |||
出時 | ひょうじょうのちょうし ○平調調子 (横笛は品玄) | 舞人は登台して出手を舞う | |
当曲 | まんざいらく ○萬歳楽 | 舞人は当曲舞を舞う | |
入時 | ひょうじょうのにゅうじょう ○平調入調 (横笛は臨調子) | 舞人は入手を舞い、降台する |
管絃 萬歳楽 | ||
前奏 | ひょうじょうのねとり ○平調音取 (琵琶は七撥・箏は爪調) | - |
当曲 | まんざいらく ○萬歳楽 | ・延八拍子・拍子十 ・末三拍子加拍子 |
▼国立劇場での主な上演記録
・第13回雅楽公演(昭和47年10月31日)
「舞楽(平舞)」宮内庁式部職楽部
萬歳楽・地久・安摩・二ノ舞
輪臺・青海波
・第16回雅楽公演(昭和49年2月23日)
「管絃(延只拍子」宮内庁式部職楽部
第一部
双調調子(笙三句)・鳥破(延只八拍子)
鳥破(延八拍子)・鳥急(総吹二返 早八拍子)
第二部
平調調子(笙三句)・萬歳楽(延只八拍子)
萬歳楽(延八拍子)・陪臚(残楽三返 早只四拍子)
・第22回雅楽公演(昭和52年10月31日〜11月1日)
「舞楽」雅楽紫絃会
第一部
四人の舞人と管絃のための
「LICHT−HIKARI−LIGHT」
第二部
萬歳楽・還城楽・春庭花
・第1回雅楽鑑賞教室(昭和47年10月31日)
「雅楽の味わいかた」雅楽紫絃会
萬歳楽(管絃)・抜頭(管絃)
萬歳楽(舞楽)・抜頭(舞楽)
・第9回雅楽鑑賞教室(昭和62年7月10日)
「管絃」伶楽舎・東京楽所
第一部
盤渉調越殿楽を課題曲としたレクチャーコンサート
第二部
平調調子・萬歳楽・春楊柳
越殿楽 残楽三返・陪臚
・第9回音楽公演(昭和63年11月10日〜11日)
「さまざまに重層する音楽シーン」伶楽舎
11月10日
第一部 古典作品
長秋竹譜・盤渉参軍序・破
第二部 明治撰定譜
平調調子・萬歳楽・甘州
林歌・陪臚
11月11日
第一部 現代作品 委嘱作品=初演
伶楽の楽器と聲明の声のための
「法勝寺塔供養」
第二部 復元された古代楽器の演奏
時の佇い・縹渺の響き
四季(シーズンズ)
・第12回音楽公演(平成2年2月28日)
「雅楽と伶楽 代表曲をいろいろな演奏のかたちで」
第一部 雅楽 明治撰定譜より
平調調子・陪臚
萬歳楽−残吹−・越天楽−残楽−
ロビーコンサート
排簫独奏のための「縹渺の響き」T
独奏 う のための「時の佇い」T
独奏箜篌のための「時の佇い」U
第二部 伶楽 敦煌譜より
秘曲の奏法に準拠して
黄鍾宮調調子・傾盃楽・西江月
慢曲子・心事子・伊州・急曲子
・第13回音楽公演(平成2年11月15日〜16日)
「二つの音楽シーン」明治撰定譜と伶楽
11月15日
古典作品(管絃)明治撰定譜に拠る
御遊の構成に準拠して
第一部 呂 双調
双調調子・春庭楽・柳花苑
回盃楽・鳥破・鳥急
第二部 律 平調
平調調子・五常楽破・五常楽急
萬歳楽・林歌・越殿楽
11月16日
現代作品
伶楽=復元された古代楽器のための音楽
歴史のない伝統
第一部
モジュール module
倭琴・唐箏・もの音・弓・光と音の装置による音楽
第二部
鳥たちへの断章・U<日本初演>
プラーナ PRANA
龍安寺<伶楽版(龍笛)初演>
・第42回雅楽公演(平成9年4月27日)
「舞楽」宮内庁式部職楽部
萬歳楽・抜頭(右方)・延喜楽
安摩・二ノ舞
・第51回雅楽公演(平成13年11月16日)
「雅楽−千年の音を聴く」十二音会
第一部 管楽器で聴く古典曲
平調調子・萬歳楽・鶏徳
第二部 管絃で聴く創作曲
管絃のための即興組曲 招杜羅紫苑