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舞人 | 装束 | ||
一人 | 人長舞装束 |
かぐら‐うた【神‐楽歌】
神楽の中でうたう神歌や民謡。特に、宮中の御神楽(みかぐら)のものは古く、庭燎(にわび)・採物(とりもの)・大前張(おおさいばり)・小前張(こさいばり)・星歌・雑歌(ぞうか)などからなる。
大辞泉(小学館)
■あらまし
神楽歌とは広くは神事や神前で奏される歌謡、歌舞全般を呼称しますが、雅楽においては宮中の「御神楽ノ儀」(みかぐらのぎ)とよばれる儀式に用いられる歌謡・歌舞を指します。
神楽歌は20程の器楽曲、歌曲で構成される壮大な組曲で、一具を奏するのに6時間以上を要します。一つ一つの歌曲は神楽歌独特の旋律を持ち、その歌詞は「神を賛美する」というよりは「神と一緒に楽しむ」ようといった内容となっています。
御神楽ノ儀は現在では年に4度、宮中賢所前の齋庭にて宮内庁式部職楽部により奉仕されています。本来神楽歌の演奏は神に対して行われるもので、聴衆を対象とはしていません。ですから楽部楽人と一部関係者以外の方が鑑賞することは許されず、儀式は非公開です。演奏を含めた儀式の奉仕は、夕刻18時頃から始まり、深夜0時過ぎ頃までの長い闇夜の時間の中、行われています。
宮中で用いられるものを「宮中御神楽」、宮中以外の神祭りや祭祀で行われるものを「里神楽」と言ったりもします(平安期における里神楽とは、宮廷の楽人が石清水・賀茂・祇園・春日などの社頭で神楽を行うものを指していたようです)。
いずれの神楽歌も起源は、古事記・日本書記に出てくる天石屋戸(あまのいわやど)の物語です。この故事によって天照大神(アマテラスオオミカミ)の神霊を慰める神事が行われるようになりました。この神事が「御神楽ノ儀」の原型となり、奈良時代には宮中で既に行われていたようです。そして神楽歌の形式は、平安期初期にかけて整えられました。
■平安期の「御神楽ノ儀」
奈良時代では豊楽院の9つある堂の中の一つ、清暑堂(せいしよどう)で臨時の神宴の際に御神楽を奏したようですが、一条天皇の御世であった(在位986-1011)の長保4年からは、宮中の内侍所(ないしどころ)の庭上で一年置きに12月に奏されるようになりました。そして白河天皇の御世であった承保年間(1074年頃)からは毎年行われるようになり、現在まで伝えられています。
また一条天皇の御世には、だいたい御神楽ノ儀の制度が完成されたと言われています。楽家録の巻之一「一條院御定之目録」には当時の御神楽ノ儀で奏していたと思われる30数曲の歌曲、舞曲が表記されています。
第一
一條院御定之目録
庭燎(ニハビ) 阿知女(アジメ)
採物之部
榊(サカキ) 幣(ミテグラ) 篠(ササ) 弓(ユミ) 鉾(ホコ) 杓(ヒサコ)葛(カヅラ) 韓神(カラカミ)
大前張之部
宮人(ミヤビト) 木綿志天(ユフシ) 難波潟(ナニハガタ) 前張(サイバリ)階香取(シナカトリ) 井奈野(イナノ) 脇母古(ワキモコ)
小前張之部
薦枕(コモマクラ) 閑野(シヅヤ) 磯等(イソラ) 篠波(サザナミ) 殖槻(ウエヅキ)総角(アゲマキ) 大宮(ヲホミヤ) 湊田(ミナトダ) 蛬(キリギリス)
雑歌之部
千歳(センザイ) 早歌(ハヤウタ) 星(ホシ) 晝目(ヒルメ) 弓立(ユダテ)朝蔵(アサクラ) 其駒(ソノコマ) 竈殿(カマドノ) 酒殿(サケドノ)
日本古典全集 楽家録 巻一 神楽』 正宗敦夫校注
御神楽は平安時代後期(白河天皇御世)に、3年間奏されなかった時期があります。それは源平の戦いで、平氏が安徳天皇を担いで西国へ都落ちした時期です。理由は三種の神器が平氏の手にあり、特に御神楽の儀に必要だった内侍所の鏡(八咫鏡)が宮中になかったためだと思われます。その後、八咫鏡が宮中に戻った時には3年間分として、3夜づつに分けて御神楽が奏されたと文献にあります。
■現在の「御神楽ノ儀」
「御神楽ノ儀」において現在まで伝承されて演奏されている楽曲は、平安期(一条天皇御世)の楽曲の内の20数曲程度(音取類を除く)です。「御神楽ノ儀」は江戸期までは京都御所の温明殿で、皇居が東京に移ってからは賢所と皇霊殿の大前で毎年、以下の祭日夜間に行われています。
●現在の宮中祭祀で奉奏される神楽歌
◇昭和天皇祭 御神楽の儀(1月7日)
◇皇霊殿御神楽の儀(4月3日)
◇鎮魂の儀(11月22日)※1
◇賢所御神楽の儀(12月中旬)
(「宮内庁ウェブサイト」http://www.kunaicho.go.jp/20years/20kiroku/saishi.htmlより参照)
現在の宮中では12月の中旬に行われる「御神楽ノ儀」、4月3日「神武天皇祭」(神武天皇崩御の日)、1月7日「昭和天皇祭」(昭和天皇崩御の日)、また新嘗祭の前日に行われる「鎮魂の儀」で、年に4度演じられます。
皇居内賢所、または皇霊殿の前庭で奉奏される御神楽ノ儀は、夕方18時頃から翌朝の午前1時頃まで行われているそうです。白い玉砂利の敷き詰められた庭上の篝火のもと、宮内庁式部職楽部の楽師達によって奏されます。またこの儀式は神に捧奏する歌舞の為、観客のいない静寂の闇夜の中で厳かに行われます(鎮魂の儀における神楽歌は※1に記載)。
▼賢所御神楽の儀の次第
定刻に楽師達が所定の場所に着き、賢所の扉を開いて神饌を献じます。次に神楽人の本拍子・末拍子と称される楽師と、神楽笛・篳篥・和琴の所作人(奏者)と人長(舞人)は、適当な場所に参列します。
午後5時に天皇陛下が出御され、綾綺殿で束帯に着装の後、御手水の儀を経て賢所に入られます。親王、王の方々も共奉し、式部長官が先導の上、侍従は剣を捧げ持ちます。次に皇后陛下が出御され、以下皇太子殿下、皇太子妃殿下と参進されます。
天皇陛下・皇后陛下・皇太子殿下・皇太子妃殿下の御拝礼ののち、いよいよ御神楽が奏せられます。庭火をたいて、掌典が榊の枝をもって賢所の階段の下におり、人長は階段のところに進み出て榊をいただいてひざまずきます。
笛の所作人が本方の座、篳篥の所作人は末方の座について「神楽音取」を奏します。次に人長は庭火の前に進み、蒔をくべている司人に「御火白うつかえ奉れ」、「軾つかえ奉れ」と発してから、「庭火」「縒合」・・・へと順に楽曲が奏せられていきます。
最後の歌舞である「其駒」が終了すると人長は賢所の階段の下に進み、掌典に榊を返して天皇陛下・皇后陛下入御の後、撤饌がなされます。扉を閉じた後、楽師諸員は退出しますが、楽師には儀式終了後、御神酒と酒肴が下賜されるそうです。
■現行の御神楽ノ儀における編成
もとかた・すえかた
●本方・末方
宮中賢所前に神楽舎を設けて庭燎をたき、楽人は二方に分かれて座します。神殿に向かって左側に座るグループを本方、向かって右側に座るグループを末方といいます。
もとひょうし・すえひょうし
●本拍子・末拍子
本方、末方にはそれぞれ句頭(くとう)役が一人ずついて、本方の句頭を「本拍子」、末方の句頭を「末拍子」といい、両者は笏拍子も担当します。
●楽器
楽器の編成は本方に和琴・神楽笛の2人、末方に篳篥の1人となっています。
もとうた・すえうた
●本歌・末歌
神楽歌一具の中には、一つの歌曲に「本歌」と「末歌」の二楽章編成となっているものが多くあります。斉唱は、本歌の楽章は本方、末歌の楽章は末方のグループが歌います。また本拍子・末拍子担当のみが、それぞれ独唱する歌曲もあります。
▼神楽歌人員編成
(国立劇場小劇場 第13回音曲公演「神楽歌」
平成7年4月8日 宮内庁式部職楽部演奏より)
本方 | |||||||
本拍子 (句頭) | 和琴 | 神楽笛 | 附歌 | ||||
1名 | 1名 | 1名 | 8名 |
末方 | |||||||
本拍子 (句頭) | 篳篥 | 附歌 | |||||
1名 | 1名 | 9名 |
舞人 (人長) |
1名 |
■和琴の調絃
▼神楽歌で用いる和琴の調絃
絃名 | 一 | ニ | 三 | 四 | 五 | 六 |
音律 (英名) | 壱越 (D4) | 黄鐘 (A3) | 壱越 (D3) | 盤渉 (B3) | 双調 (G3) | 平調 (E3) |
▼神楽歌・久米歌で用いる和琴の調絃法(絃合)
@ | 三→ 一 | ||||
D3 → D4 (上方完全八度) | 壱越 → 壱越 (甲乙律) | 宮 → 宮 | |||
A | 三 → ニ | ||||
D3 → A3 (上方完全五度) | 壱越 → 黄鐘 (順八律) | 宮 → 徴 | |||
B | ニ → 六 | ||||
A3 → E3 (下方完全四度) | 黄鐘 → 平調 (逆六律) | 徴 → 商 | |||
C | 六 → 四 | ||||
E3 → B3 (上方完全五度) | 平調 → 盤渉 (順八律) | 商 → 羽 | |||
D | 三 → 五 | ||||
D3 → G3 (上方完全四度) | 壱越 → 双調 (順六律) | 宮 → 律角 |
※絃合の作法
和琴の奏者は、宮音である壱越調を神楽笛当役よりもらい、それを基音として三絃に合わせます(久米歌は龍笛当役より)。そしてこの絃からオクターブ上の音(甲乙律)を一絃にとり、また同じく三絃から上方完全五度(順八律)をニ絃にとります。次にニ絃から下方完全四度(逆六律)を六絃にとり、さらに六絃から上方完全五度(順八律)を四絃にとります。最後に三絃から上方完全四度(順六律)を五絃にとり、絃合とします。
▼現行の神楽歌一具
役 | 部 | 歌曲名 | 本歌 末歌 | 歌方 | 付方 | 斉唱 奏楽 | ||||||||||||||||
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| かぐらねとり 神楽音取 | - | 神楽笛 篳篥 | 独奏 | |||||||||||||||||
にわび 庭火 | - | 神楽笛 篳篥 和琴 | 各独奏 | |||||||||||||||||||
- | 神楽笛 篳篥 | 二重奏 (縒合) | ||||||||||||||||||||
本拍子 | 和琴 | 各独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||||
末拍子 | 和琴 | 各独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||||
くじびょうし 久止拍子 | 本拍子 末拍子 | 和琴 | 本末二人唱 (和琴助奏) | |||||||||||||||||||
だんのひょうし 段拍子 | - | 和琴 | ||||||||||||||||||||
あぢめさほう 阿知女作法 | 本歌 | 本拍子 | 和琴 | 本拍子独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
あぢめさほう 阿知女作法 | 末歌 | 末拍子 | 和琴 | 末拍子独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
あぢめさほう 阿知女作法 | 本歌 | 本拍子 | 和琴 | 独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
さんどびょうし 三度拍子 | 本拍子 末拍子 | 和琴 | 本末二人唱 (和琴助奏) | |||||||||||||||||||
| もんじゃくのねとり 問籍音取 | - | 神楽笛 | 独奏 | ||||||||||||||||||
さかき 榊 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
尻上 | 本拍子 | 和琴 | ||||||||||||||||||||
おけ 於介 | 本歌 | 本拍子 末拍子 | 和琴 | |||||||||||||||||||
さんどびょうし 三度拍子 | 本拍子 末拍子 | 和琴 | ||||||||||||||||||||
からかみ 韓神 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
はやからかみ 早韓神 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
おけあぢめ 於介阿知女 | 本歌 | 本拍子 | 和琴 | 本拍子独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
おけ 於介 | 末歌 | 末拍子 | 和琴 | 末拍子独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
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| こさいばりあぢめ 小前張阿知女 | 本歌 | 本拍子 | 和琴 | 本拍子独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||
こさいばりあぢめ 小前張阿知女 | 末歌 | 末拍子 | 末拍子独唱 (和琴助奏) | |||||||||||||||||||
こさいばりのねとり 小前張音取 | - | 和琴 | 独奏 | |||||||||||||||||||
くじびょうし 久止拍子 | 本拍子 末拍子 | 和琴 | 和琴 本拍子 末拍子 | |||||||||||||||||||
こもまくら 薦枕 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
さざなみ 篠波 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
| せんざい 千歳※2 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
本歌 | 本拍子 | 和琴 | 本拍子独唱 (和琴助奏) | |||||||||||||||||||
末歌 | 末拍子 | 和琴 | 末拍子独唱 (和琴助奏) | |||||||||||||||||||
はやうた 早歌 | 本歌 | 本拍子 | 和琴 | 本拍子独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
本歌 | 本拍子 | 和琴 | 独唱 (和琴助奏) | |||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
はやうたあげびょうし 早歌揚拍子 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
おけ 於介 | 本歌 | 本拍子 | 和琴 | 独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
休憩※1 | ||||||||||||||||||||||
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| ほしのねとり 星音取 | - | 和琴 篳篥 神楽笛 | 各独奏 | |||||||||||||||||
ききりり 吉々利々 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
とくぜにこ 得銭子 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
ゆふつくり 木綿作 | 本歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
| あさくらのねとり 朝倉音取 | - | 神楽笛 篳篥 和琴 | 各独奏 | ||||||||||||||||||
あさくら 朝倉 | 本歌 | 本拍子 | 和琴 | 独唱 (和琴助奏) | ||||||||||||||||||
末歌 | 末拍子 | 和琴 | 独唱 (和琴助奏) | |||||||||||||||||||
そのこまさんどびょうし 其駒三度拍子 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) | |||||||||||||||||||
そのこまあげびょうし 其駒揚拍子 | 全員 | 和琴 篳篥 神楽笛 | 全員斉唱 (付物助奏) |
※1...鎮魂の儀は午後6時頃〜午後9時頃まで行われる「夕(よい)の儀」と、午後11時〜午前1時頃まで行われる「暁(あかつき)の儀」に合わせて、神楽歌も二部構成となっているそうです。また二部間には休憩があり、その際楽師は下賜される濁酒をいただくそうです(楽師談)。
※2...千歳は本歌・末歌共に二度くり返すが、二度目は本方・末方のみ独唱する。また二度目に歌う曲を特に「尚千歳なおせんざい」といいます。
※天皇の即位時や伊勢神宮の御神楽においては、上記以外の「秘曲」も加えられるようです。
■御神楽の奉奏と近年の上演
▼伏見稲荷大社の御神楽
京都の伏見稲荷大社では毎年、火焚祭(11月8日)の夕刻18:00より、庭燎の焚かれた本殿前庭上において「御神楽」が奉奏されています。この奉奏では早韓神の人長舞が行われ、参拝者は拝殿に上がって観覧出来ます。
この御神楽は、古の鎮魂祭にもとづく神事で、一時中絶されていましたが、孝明天皇の文久三年に、禁裏御所の特別の思召しで再興され、現在では大社の職員によって奉仕されています。庭燎の薄明かりの中で、本歌・末歌・和琴・笛・ひちりきが次々と奏でられ、早韓神が歌われるなか、荘重古雅な「人長舞」が舞われます。
▼鶴岡八幡宮の御神楽
鎌倉の鶴丘八幡宮では毎年、御鎮座記念祭(12月16日)の夕刻17:00より、庭燎の焚かれた舞殿北庭において「御神楽」が奉奏されます。この御神楽では人長式の後「音取」「阿知女作法」「三度拍子」の後、現行では行われていない「弓立(ゆだて)」が唱和されます。その後巫女舞を挟んで「其駒」に合わせて人長舞が行われます。
鶴丘八幡宮は、源頼朝の時代、建久2(1191年)11月21日に遷宮が行われました。その時に演じられた「御神楽」は、内裏の楽所の陪従であった多好方一行によって楽奏されたという記録が残っています。御神楽はその後鶴岡八幡宮の楽人によって伝承され、現在では、御鎮座(遷宮)の日を新暦に換算した12月16日の「御鎮座記念祭」において奉奏されています。国立劇場令和元年6月特別企画公演「鶴岡八幡宮の御神楽と巫女舞」(2019年6月1日)パンフより引用
▼国立劇場での上演記録
・第5回歌謡公演(昭和55年6月27日〜28日)
「御神楽」悠久なる神事の歌舞
宮内庁式部職楽部楽師・伏見稲荷大社神職他・鶴岡八幡宮神職他
御神楽一具(大曲:弓立 秘曲:宮人含めて上演)
・第13回音曲公演(平成7年4月8日)
「神楽歌」宮内庁式部職楽部
阿知女作法・榊・韓神・早韓神(人長舞)他
・第67回雅楽公演(平成22年2月27日)
「神楽歌」宮内庁式部職楽部
中役(神遊び)〜後役(神送り)
・令和元年6月特別企画公演(令和元年6月1日)
「鶴岡八幡宮の御神楽と巫女舞」鶴岡八幡宮
人長・弓立・巫女舞・其駒