■あらまし

現行の雅楽とは、いくつかの古代音楽の種目を総称した名称ですが、その中の一つに「唐楽」があります。唐楽は高麗楽と双璧をなして、雅楽を代表するジャンルの一つです。唐楽演奏の編成には、華やかな和音を発声する笙や、アルペジオでリズムを刻む絃楽器があります。その編成より音楽に優美な雰囲気が添えられることから、雅楽の中では比較的披露されることの多い種目となっており、一般的に雅楽というと、唐楽のイメージが強いと思います。

とう‐がく【唐楽】
１ 中国唐代の音楽、およびその朝鮮半島・日本に伝来したもの。
２ 雅楽の分類の一。平安初期の楽制改革で、日本に伝来した1と林邑楽(りんゆうがく)とを合わせて成立。器楽合奏のみの管絃と舞を伴う舞楽とがある。左楽(さがく)。→高麗楽(こまがく)

「大辞泉」小学館

唐楽は高麗楽と同じく外来系音楽ですが、高麗楽が朝鮮半島を経由して伝来したのに対して、天竺（インド）や林邑（ベトナム）、唐（中国）より遣唐使や来日した人々によって伝えられた音楽であり、さらにその形式を模して、中世までに日本で作られた音楽の総称をいいます。

唐楽の楽曲は６つの調子と、およそ１００曲あまりの楽曲が、現存してます。

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▼唐楽で用いられている楽器

管絃の編成
管楽器	龍笛 （1人〜数人）	篳篥 （1人〜数人）	笙 （1人〜数人）
絃楽器	箏 （1人〜3人程度）	-	琵琶 （1人〜3人程度）
打楽器	鉦鼓 （1人）	太鼓 （1人）	鞨鼓 （1人）

舞楽の編成
管楽器	龍笛 （1人〜数人）	篳篥 （1人〜数人）	笙 （1人〜数人）
打楽器	鉦鼓 / 大鉦鼓 （1人）	太鼓 / 鼉太鼓 （1人）	鞨鼓 （1人）

※一部楽曲では、絃楽器を用いる作法もあります。

唐楽を用いる舞は「左方（さほう）」と称され、装束は朱色系統、金具は金色で統一され、三巴をシンボルとしてます。


現行の管絃楽曲一覧（明治撰定譜）

壱越調

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しゅんのうでんのじょ・さっとう・じゅは・てっしょう・きっしょう
■春鶯囀遊声・序・颯踏・入破・鳥声・急声

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　かてんのは・きゅう
　■賀殿破・急

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　　かりょうびんのは・きゅう
　　■迦陵頻破・急

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　　　じょうわ（しょうわ）らく
　　　■承和楽

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　　　　ほくていらく
　　　　■北庭楽

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　　　　　らんりょうおう
　　　　　■蘭陵王

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　　　　　　こんじゅのじょ・は
　　　　　　■胡飮酒序・破

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　　　　　　　しんらりょうおうのきゅう
　　　　　　　■新羅陵王急

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　　　　　　　　かいばいらく
　　　　　　　　■囘盃楽

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　　　　　　　じってんらく
　　　　　　　■十天楽

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　　　　　　ぼさつのは
　　　　　　■菩薩破

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　　　　　しゅこし
　　　　　■酒胡子

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　　　　ぶとくらく
　　　　■武�ｺ楽

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　　　しゅせいし
　　　■酒�C司

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　　いっときょう
　　■壹團嬌

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平調

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おうじょうのは・しちじょう・はちじょうかんどう・くじょう・きゅう
■皇麞破・七帖・八帖換頭・九帖・急

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　ごしょうらくのじょ・は・きゅう
　■五常楽序・破・急 ※1

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　　まんざいらく
　　■萬歳楽

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　　　　かんしゅう
　　　■甘州

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　　　　さんだいえんのきゅう
　　　　■三臺塩急

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　　　　　しゅんようりゅう
　　　　　■春楊柳

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　　　　　　　りんが
　　　　　　■林歌

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　　　　　　　ろうくんし
　　　　　　　■老君子

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　　　　　　　　　ばいろ
　　　　　　　　■陪臚

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　　　　　　　　　けいとく
　　　　　　　　　■鶏徳

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　　　　　　　　　　きょううんらく
　　　　　　　　　　■慶雲楽

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　　　　　　　　　かとうらく
　　　　　　　　　■裹頭楽

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　　　　　　　　そうふれん
　　　　　　　　■相府蓮

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　　　　　　　ようじょうのきゅう
　　　　　　　■勇勝急

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　　　　　　　ふなん
　　　　　　■扶南

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　　　　　やはんらく
　　　　　■夜半楽

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　　　　ころうじ
　　　　■小郎子

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　　　おうしょうくん
　　　■王昭君

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　　えてんらく
　　■越天楽

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　まんざいらく（のべただ）
　■萬歳楽（延只）

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双調

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しゅんでいらく
■春庭楽

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　りゅうかえん
　■柳花苑

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　　かいばいらく
　　■回盃楽

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　　　　さっとう
　　　■颯踏

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　　　　　じゅは
　　　　■入破

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　　　　　しゅこし
　　　　　■酒胡子

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　　　　　　ぶとくらく
　　　　　　■武徳楽

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　　　　　　　かてんのは・きゅう
　　　　　　　■賀殿破・急

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　　　　　　とりのは・きゅう
　　　　　　■鳥破・急

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　　　　　こんじゅのは
　　　　　■胡飲酒破

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　　　　ほくていらく
　　　　■北庭楽

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　　　　りょうおう
　　　■陵王

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　　しんらりょうおうのきゅう
　　■新羅陵王急

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　とりのは（のべただ）
　■鳥破（延只）

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黄鐘調

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きしゅんらくのは
■喜春楽破

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　とうりか
　■桃李花

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　　ようぐうらく
　　■央宮楽

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　　　かいせいらく
　　　■海青楽

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　　　　へいばんらく
　　　　■平蛮楽

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　　　　　さいおうらくのは
　　　　　■西王楽破

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　　　　　　じゅっすいらく
　　　　　　■拾翠楽

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　　　　　　　そこうのきゅう
　　　　　　　■蘇合香急

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　　　　　　　　せいがいは
　　　　　　　　■青海波

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　　　　　　　　とりのきゅう
　　　　　　　■鳥急

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　　　　　　えてんらく
　　　　　　■越殿楽

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　　　　　せんしゅうらく
　　　　　■千秋楽

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盤渉調

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そこうのじょいちじょう・さんのじょう・よんのじょう・ごのじょう・は・きゅう
　■蘇合香序一帖・三帖・四帖・五帖・破・急

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まんじゅらくのじょ・は・にじょうかんどう・さんじょうかんどう・よんじょうかんどう・ごじょう・ろくじょう
■萬秋楽序・破・二帖換頭・三帖換頭・四帖換頭・五帖・六帖

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　そうめいらく
　　■宗明楽

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　　　　りんだい
　　　■輪台 ※1

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　　　　せいがいは
　　　　■青海波 ※1

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　　　　　　はくちゅう
　　　　　■白柱

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　　　　　　ちくりんらく
　　　　　　■竹林楽

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　　　　　　　そまくしゃのじょ・は
　　　　　　　■蘇膜者序・破

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　　　　　　せんしゅうらく
　　　　　　■千秋楽

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　　　　　えてんらく
　　　　　■越殿楽

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　　　　さいそうろう
　　　　■採桑老

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　　　けんきこだつ
　　　■劔気褌脱

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太食調

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ちょうこうし
■朝小子

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　ぶしょうらく
　■武昌楽

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　　がっかえん
　　■合歓塩

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　　　たぎゅうらく
　　　■打球楽

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　　　　けいばいらくのきゅう
　　　　■傾盃楽急

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　　　　　せんゆうが
　　　　　■仙遊霞

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　　　　　　げんじょうらく
　　　　　　■還城楽

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　　　　　　ばとう
　　　　　■抜頭

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　　　　ちょうげいし
　　　　■長慶子

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　　　そほうひ
　　　■蘇芳非

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　　りんここだつ
　　■輪鼓褌脱

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　そにんさんだい
　■庶人三台

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その他

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こがくらんじょう
■古楽乱声 ※2

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　しんがくらんじょう
　■新楽乱声 ※3

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　　こらんじょう
　　■小乱声

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　　　りょうおうらんじょ
　　　■陵王乱序 ※4

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　　　　あまらんじょう
　　　　■安摩乱声 ※5

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　　　　　ぼんげん・にゅうじょう
　　　　　■品玄・入調 ※6

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　　　　　　あがちょうし・かんじょうし
　　　　　　■臨調子・上調子 ※7

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　　■各調子・絃合・掻合

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　　　■各音取・乱声・爪調・七撥

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註）

※1...楽章に「詠」があるが、これは舞楽での演目。「詠」楽章の絃譜は伝わっておらず、したがって管絃では演奏されない。
※2...異名：林邑乱声（りんゆうらんじょう）。演奏は打楽器と龍笛の退吹。
※3...演奏は打楽器と龍笛の退吹。同時に高麗笛で、高麗小乱声を退吹で奏する振鉾の前奏曲を特に「集会乱声（しゅうえのらんじょう）」といい、現在は主に天王寺楽所を継承する団体によって、演奏されてる。
※4...演奏は打楽器と龍笛の追吹。
※5...演奏は打楽器と龍笛の退吹。
※6...「品玄」は龍笛の曲で唐楽六調子それぞれにあり、「入調」は壱越・双調・黄鐘・盤式の各調子にある。また品玄・入調は現行では、舞楽の際の舞人登場・退場の際に龍笛の退吹で演奏される（同時に笙・篳篥は「調子」を演奏する）。
※7...臨調子は平調における龍笛の入調曲、上調子は太食調の同じく龍笛の入調曲。